登入「あ~あ、上手く行ってると思ったんだけどな~。でも、流石の洞察力だね。普通の人なら気づかないんだけどね」
「どこまでが計算なんだ?」 「質問が違うよお兄ちゃん。『何処からが正解』だよ?」その言葉を受けてお兄ちゃんは面食らった表情をした。
そして、躊躇いがちに尋ねてくる。「もしかして、ギャル達に虐められていたのも?」
「せいか~い」 「めぐは? 親友だって言ってたよな? そんなめぐも利用したのか?」 「うん、利用した」ひとつひとつに機械的に答えていく。
だってもう何も隠す必要は無いんだから。 そして質問に答える度に、お兄ちゃんの声に熱がこもるのを感じた。「なんで……どうしてそんな事が出来るんだよ? 親友だって言ったのは嘘だったのか!?」
お兄ちゃんがここまで感情を露わにするのも久しぶりな気がする。
それはそれで計画がうまくいっているって事なのだろうけど……。 よく考えてみたら、お兄ちゃんから責められるって事は今までなかったかもしれない。 「うるさい。 お母さんたち起きちゃうでしょ」あまりの緊迫感にそう言うしかなかった。
そしてお兄ちゃんは私の肩を掴んで、怒気を孕んだ声で言った。「どうしてこんな事したんだよ!?」
『どうして……?』昔のお兄ちゃんに戻って欲しい。 ただそれだけなのに。 どうして気づかないの? でもそんな事、今は口が裂けても言えない。
怒りと悲しみが入り混じった、自分でも整理できない感情。
思考が追いつく前に私はお兄ちゃんの手を振り払っていた。 「お兄ちゃんの所為でしょ!?」 「俺の……所為?」何も分かっていないお兄ちゃんに怒りが爆発してしまった。
「そうだよ! お兄ちゃんがいつまでも変わろうとしないから! 中学の時は学校中から嫌われていたお蔭で私は実の兄が学校一の嫌われ者という悲劇のヒロインでいられた。でも高校では精々クラスでいつも一人で居る奴程度。それじゃ私が困るの!」
「どういう意味だ? どうして柚希が困るんだ?」 「はぁ~。もうこの際だから全部言っちゃうけど、私って常に皆から注目されたり、認めて貰いたいんだよね。その為に私は色んな努力をしてきたつもり」冷静にならなきゃいけないのに感情が抑えられない。
計画なんてもうどうでもいい。 ただ、私の気持ちをお兄ちゃんに知って貰いたい。 そんな想いで言葉を続ける。「めぐが学年で2位の秀才なのは知ってるよね? じゃあ1位は誰だと思う?」
「……柚希か?」 「正解、勉強だけじゃないよ? 部活だって全国に行ったのは私だけだし、持久走でも1位だし、その他にも表彰された事は何度もある。私は自分が目立つことなら何でもやってきた。お兄ちゃんの妹の立場も利用して悲劇のヒロインっていう役も演じた」お兄ちゃんを更正させる計画だけど、私の自己顕示欲を満たす計画でもあった。
「私ってさぁ、自己顕示欲? っていうの? それが人一倍強いみたいなんだよね~」
「どうして俺を変えようと思ったんだ?」
「悲劇のヒロインは無理だと分かったし、一度経験してるから別の事で注目されたかったんだよね~。そこできづいたの! お兄ちゃんは顔の作りは悪くない。っていうかキチンとすればイケメンの部類に入るってね」
自己顕示欲の強い私は、自分の兄のビジュアルに目をつけた。
そして、リア充にする計画が私の欲求を満たす事に繋がると気づいた。 「だからお兄ちゃんを学校一のリア充にすれば、私はイケメンリア充の妹って事で注目されるんじゃないかってね。そこで一芝居打ってお兄ちゃんを焚き付けた訳。そしてまだ途中だけど結果は上々。気づいた? めぐ、お兄ちゃんに惚れてたよ?」自分に好意を寄せている女子がいる。
しかもめぐは私も認める美少女だ。 その事実を突きつけられ、お兄ちゃんは明らかに動揺していた。「その様子だと気づいてなかったみたいだね」
「いやいや、今日初めて会ったんだぞ? 確かに会話は楽しかったけど、それだけで惚れるか?」お兄ちゃんは全力で否定するが
「それだけお兄ちゃんがイケメンに変わったって事だよ。特訓の成果だね」
「あ、でもまだ特訓の途中だから調子に乗らない様に!」 「まだ……続けるのか? 俺に計画を知られたのに」 「当たり前じゃん! こんなんじゃ全然満足できないもん!」私は堂々と言い放った。
「俺が嫌だといったらどうするんだ?」
私は冷たい微笑みを浮かべて言った。「大丈夫だよ。お兄ちゃんは絶対に私に協力する。もう引き返せないよ?」
そして迎えた新学期、お兄ちゃんより少し遅れて家を出る。
お兄ちゃんが校門の前でぼーっとしていたので、後ろから「な~に黄昏てんの? お兄ちゃん」
「いや、春休み色々やってきたけどちょっと不安になってな」 「大丈夫だって! 私がプロデュースしてるんだから!」 「凄い自信だな」 「まぁね~」なんて話していると
「おはようございます!」
と小走りで近くにまで来てめぐが挨拶をする。
「おはよう、めぐ」
「おはよ~」
「あ、その制服かわいい~」
「何言ってるの。めぐだって同じ制服でしょ」 「アハハ、そうだったぁ」 少し抜けている部分があるけど、外見の可愛さも相まってそこがいいと言う男子も多い。 私の他に注目されてる子が居るなんて許せない。 ……なんていつもなら思うんだけど、めぐだけは全くそれを感じないんだよなぁ。 「ゆず、制服似合ってるよ」 「ありがと。めぐも似合ってる」 「ふふ。ゆずに褒められると嬉しい」めぐはいつも私を信頼してくれる。
それが嬉しいし、私もめぐを信頼している。「じゃあ俺は教室行くから」
「頑張ってねお兄ちゃん」 「はい、頑張ってください」そう言って、私とめぐも一年生のクラス割を見に行く。
掲示板の前は人で溢れかえっていた。めぐと一緒に始める新しい学校生活が純粋に楽しみで仕方がない。
私たちはワクワクしながら校舎に足を踏み入れた。 教室は既に賑わっていた。 黒板に貼られた座席表を見て自分の席に座る。 めぐとは丁度隣同士だ。先生が入ってきて軽い挨拶と説明をされる。
生徒同士の自己紹介の時間になった。「佐藤柚希です。咲崎中学から来ました。テニス部に所属する予定です」
その後、先生が出て行った途端に教室が騒がしくなる。
どこ中出身か? あの先輩は知ってるか? あの駄菓子屋言ったことあるか? 共通の話題を見つけては盛り上がり、既にいくつかのグループが出来上がっていた。 「ねぇ、佐藤さんと染谷さんって咲崎中だったんでしょ?」 「うん、そうだよ」私とめぐの周囲にも数人の女子が集まってきた。
「私の友達が咲崎中に居たんだよね~。山田秋子っていうんだけど」 「えー! 秋子ちゃんの友達なんだ~」 「うん、そうなの。じゃあさ、咲崎中の佐藤友也って知ってる?」お兄ちゃんの名前を聞いて、場の空気が少し変わった。
「あー! ウチ知ってる。根暗の佐藤の事じゃね」
「アタシも知ってるわー」 「それで秋子から聞いたんだけど、その佐藤友也って高校ココらしいよ」皆の反応に、一瞬心臓が跳ねた。
「うん、それも知ってるよ。仲良いから」
敢えて兄という事は伏せて相槌を打つ。
根暗でヲタクの有名人と私が知り合いという事にみんな驚いていた。 「へぇ~そうなんだ。意外」 「柚希ちゃん可愛いのにね……あ、別に深い意味はないよ!」 みんな直接的な言い方はしていなかったけど、私はただただ笑顔でその場を過ごした。
――――――
―――― ――夜の11時、私の部屋にお兄ちゃんを呼び出した。
「で、今日は学校でどうだった?」
早速、一日中気になっていた事を訊いてみた。
特訓の成果はちゃんと出たかな?「……という事があった」
「やったじゃん! 初日にしては大成功だよ!」と私に褒められるとお兄ちゃんは照れていた。
「ありがとう、柚希のお蔭だよ」
と素直にお礼される。
「お礼言うのは早いよ。私言ったでしょ? お兄ちゃんを学校一のイケメンリア充にするって。だから今の段階で満足しないで」
昼間の事を思い出し、少し強めに忠告する。
過去のお兄ちゃんを知っている人も少なくないし、油断していられない。「あ、ああ分かってる」
「なら良し!」その後、これまでの特訓の経過や今後の課題について話した。
「もうこんな時間だ。取りあえず今日はここまでね」
「え? いやちょ……」 「頑張ってね! 明日の報告楽しみにしてるから」と最後に満面の笑みを見せて無理やり終わらせた。
学校でのお兄ちゃんについては、当面の問題はないだろう。
イメチェンした佐藤友也に驚愕するみんなの顔が目に浮かぶようだ。 それよりも今は、明日のテニス部見学が楽しみだ。私はワクワクしながら眠りについた。
お兄ちゃんが私のことをずっと好きだった……? にわかには信じられない言葉を聞いて混乱する。「だから柚希のことを気持ち悪いだなんて思わないし、俺のことが好きだと言ってくれて嬉しい」 真っ直ぐ、視線を外さずに言葉を浴びせてくる。 私のことを好きだと言ってくれて凄く嬉しい! だけど、それをどこまで信じていいか疑っている自分もいる。 そんな自分が嫌だとわかりつつも、私の口は勝手に動いていた。「新島先輩は? お兄ちゃんの初恋は新島先輩だったって言ってたよね」 そう問いかけると、お兄ちゃんは困った様に頭を掻きながら答える。「確かに楓は俺の初恋の女の子だ。でもそれは柚希以外での事なんだ」「私以外で?」 首を傾げる私にお兄ちゃんは説明を始めた。「ああ。さっきも言った通り、小さい頃から柚希の事を一人の女の子として好きだった。だけどそれは歳を重ねていく内に許されない恋なんだと知った。だから柚希以外の子を好きになろうと思った。けど、その時の俺は周りから孤立していたし、どこかで無理かもなって思いもあった」 孤立してしまった原因を作ってしまったのは私の所為だし、あの一件で余計にお兄ちゃんの事が好きになったんだっけ。「そんな時、一人の女の子が俺に話しかけてくれた。周りからボッチだのヲタクだの言われてる俺に対して優しく接してくれた。その当時の俺は自ら人を避けていたけど、その女の子と話している間の空間は凄く居心地がよかったんだ。そういう事も重なって俺は始めて柚希以外の女の子を好きになった」 そう語ってくれたお兄ちゃんに対して、私は更に意地悪な質問をする。「水瀬先輩の好意や、友華さんと沙月ちゃんに対してはどうなの?」「こんな俺に好意を寄せてくれるのは凄く嬉しかったし、俺自身みんなに惹かれていってた」 そして深く息を吐き、申し訳無さそうな顔をする。「だから皆とは付き合えないと伝える決意をするのに時間が掛かっちゃって申し訳ないと思ってる」 そう
私は今何て言った? 部屋の前で盗み聞きをして、沙月ちゃんとお兄ちゃんがそういう会話が聞こえてきて……無意識に部屋に飛び込んだ。 その後に沙月ちゃんと口論になって……それから――――『お兄ちゃんの事が好きなんだから!!』 そうだ……お兄ちゃんを盗られたくない一心で――――「柚希……今のって」 お兄ちゃんは状況が理解出来ないといった感じで見つめている。 それもそうだ。突然妹からあんな事言われたら混乱するに決まってる。「やったね柚希ちゃん。やっと言えたじゃん!」 沙月ちゃんが嗜虐的な笑みを浮かべながら私の肩をポンッと叩く。 ハメられた! きっと私が部屋の外で話を聞いてると踏んで沙月ちゃんは最初からこうなる様にお兄ちゃんに色仕掛けしてたんだ! 「っ!」「柚希ちゃん!」「ちょ、待てよ!」 どうしよう! どうしよう! どうしよう! どうしよう! 言うつもりは無かったのに! 妹として傍にいようって決めてたのに! 幾ら沙月ちゃんに煽られたからってあんな事言っちゃうなんて!「はぁ、はぁ……ここは?」 お兄ちゃんから逃げる事しか考えて無かったから、いつの間にか公園に辿り着いちゃった。 でも、ここまで来れば流石に見つかんないよね……。「はぁ……これからどうしよう」 ベンチに腰を下ろすと、つい言葉が漏れてしまった。「ビックリしてたなぁ……」 そりゃそうだよね。実の妹が異性として兄を好きだなんて思ってもみないだろうし。 はぁ……流石に嫌われちゃったよね……。「柚希! ハァハァ&h
『自分の気持に素直になってみたら?』 翌日になっても新島先輩の言葉が頭から離れない。 素直になっても報われないなら……もしかしたら気持ち悪い妹だと思われたらと考えてしまう。「ダメだなぁ……ネガティブな事しか浮かんでこない」 そう独りごちて、思考を振り払う様に頭を振る。それから大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせてお兄ちゃんの部屋のドアをノックして中に入った。「どう? お兄ちゃん。少しは良くなった?」「ああ、熱も下がって倦怠感も無くなったよ」 そう言って腕をぐるぐる回す。 「良かった。でもあまり調子に乗らないように! 今日一日は安静にしててね」「大丈夫だって」「ダメでーす。風邪はひき始めと治りかけが一番重要なんだから」「母さんみたいな事言うな」「はいはい、なんとでも言いなさい。とにかく安静にしてるんだよ」「はぁ、分かったよ」 諦めたようにベッドに横になるお兄ちゃんを見届けて部屋を出た。 少し体調が良くなったからって直ぐ調子に乗るんだから。 でも、良くなってよかった。 リビングでテレビを見ながら勉強しているとインターホンが鳴った。 まさかまた新島先輩が来たのかな? と頭の隅で考えつつモニターを確認すると、今度は沙月ちゃんが立っていた。 玄関を開けると沙月ちゃんは元気良く挨拶してくる。「柚希ちゃんやっほ~」「やっほー。もしかしてお兄ちゃんのお見舞い?」「うん。急だったけど大丈夫かな?」「大丈夫だよ。体調も良くなってきてるし」「よかった~」 家に招き入れお兄ちゃんの部屋まで案内する間、疑問に思った事を聞いてみる。「そういえば、どうしてお兄ちゃんが体調崩したって知ったの? 心配掛けない様に黙ってたのに」「昨日南さんから聞いたんだ~。南さんは楓さんから聞いたって言ってた」「そうだ
水瀬先輩の想いを聞いてから数週間が経った。 当初懸念していた接し方や態度も以前と変わらず、普段どおり接してきてくれるとお兄ちゃんから聞いた。 それに一番驚いたのは水瀬先輩が合コンにハマった事だ。 沙月ちゃんに無理矢理連れて行かれた合コンで、チヤホヤされたのが嬉しかったらしい。 合コンの度に「やっぱりトモより良い男いないや」とボヤいていたので、今でもお兄ちゃんの事は好きなんだと思う。 だけど水瀬先輩はお兄ちゃんにはそんな素振りを一切見せていないらしい。 多分それはお兄ちゃんが好きで、幸せを願っているからこそなんだと思う。 沙月ちゃんのお陰で水瀬先輩は気持ちの整理が出来たのは嬉しい反面、合コンにハマってしまっている事に関してはお兄ちゃんも心配していた。「沙月には感謝だけど、他にやりようはなかったのかなぁ」 とお兄ちゃんがボヤいていた。 まぁ自分の事を好きで居てくれた女の子がいきなり合コンにハマりだしたのだから複雑な気持ちなのだろう。 お兄ちゃんだけでなくグループの人達全員が水瀬先輩の変わりように戸惑っていたみたいだ。 それも最初の内だけで、今では水瀬先輩=合コンというキャラが定着しつつあるらしい。 実際私も何度か誘われたが丁重に断った。 そんな出来事がありながら中間試験も終了し試験休みに入ったのだが、休みに入った途端、お兄ちゃんが熱を出して倒れた。 そして今は看病の真っ最中だ。「もう、お兄ちゃんは無理し過ぎだよ」「ゴホッゴホッ! すまん……」 どうしてこうなったかというと、文化祭のライブが切っ掛けだった。 振替休日が終わり学校へ行くと、1年から3年まで分け隔てなく女子から猛アプローチを受けていた。 授業が終わり帰宅する時には、校門に他校の女子が出待ちまでしてたし。 アプローチされても軽く流せばいいのにお兄ちゃんは一人ひとり丁寧に対応し、睡眠時間をへらしてまでファン達の相手をしていた。 気持ちを無下にできないっていうお兄ちゃんらしい優しさではあったけ
昨日は凄い一日だったなぁ。 お兄ちゃんが水瀬先輩を振るシーンを見ちゃったり、その後参加した打ち上げの後での新島先輩とお兄ちゃんのやり取りを聞いたり。 新島先輩がなんで私にまで話を聞かせたかは未だに分からないけど、問題は水瀬先輩なんだよなぁ。 もしこれで水瀬先輩がお兄ちゃんから離れていってしまったら絶対お兄ちゃんのグループの雰囲気は悪くなる。そうなると中居先輩が黙ってないだろうし……。「それに……お兄ちゃんの好きな子ってやっぱり――」 試験勉強をしていたがどうしてもその事が頭に浮かんでしまう。 残る候補は沙月ちゃんだけだからほぼ確定なんだろうけど……沙月ちゃんはお兄ちゃんのことどう思ってるんだろう。 私のことを応援すると言ってくれてたけど、私の事を理由に断って欲しくない。 例えお兄ちゃんが沙月ちゃんと付き合ったとしても、私はお兄ちゃんの妹だし、これまで通り傍に居られるだけでいい。 そんな事を考えているとスマホの通知音が鳴った。 スマホを手に取り確認する。「水瀬先輩からだ……」 アプリを開いてメッセージを確認する。〈大切な話があるから今から話せないかな?〉 大切な話ってなんだろう? それよりも気持ちの整理はついたのかな。 とりあえず返信しないと。 〈大丈夫ですよ〉 〈ありがと。沙月ちゃんにも話すから今グループ作るね〉 わざわざ3人だけのグループを作って話すことってなんだろう? そう考えている内にグループへの招待が来たので参加する。 沙月ちゃんも参加して全員揃ったところで通話が掛かってきた。「もしもし、こんにちは」「南さんこんにちは~」「2人ともこんちはー。急にごめんね~」「いえいえ、大丈夫ですよ」「はい、丁度暇してたので問題ないです」 話し方や声のトーンはいつもと変わらない。
新島先輩に続いて水瀬先輩までフラれた。 そうなるとお兄ちゃんの好きな女性は必然的に沙月ちゃんって事になる。 沙月ちゃんには今まで色々相談に乗って貰ったり、私の唯一の理解者でもあった。 だからこそ私が沙月ちゃんを祝福してあげないと。「待たせて悪いな」「ひゃっ!」 考え事をしていたらいつの間にかお兄ちゃんが校門にやってきていた。 ビックリして変な声出ちゃったけど不審に思われないよね?「なんだよその反応は。ちょっと傷ついたぞ?」「ご、ごめん。ちょっと考え事してたからお兄ちゃんに気づかなくて」「まぁ遅くなった俺が文句言えないか。んじゃ行くか」「……う、うん」 水瀬先輩はどうしたの? という言葉を飲み込んだ。 私があの現場を見ていたと知ったら色々気まずいだろうし、何より水瀬先輩の事を思うと私が見てたという事実は無かった事にした方がいい。「文化祭は楽しかったか?」「楽しかったよ。特にお兄ちゃんのライブは興奮したなぁ~」「その話はやめてくれ。皆褒め過ぎなんだよなぁ」「とか言ってお客さんを凄い煽ってたりしてたじゃん」「あ、あれはああやれって言われたから仕方なくだよ」「それにちゃっかりクラスの宣伝までしちゃって~」「うぅ、あれは……もうなんとでも言え!」「あはは、ごめんごめん」 お兄ちゃんを揶揄っていると打ち上げ会場に着いた。 入店すると沙月ちゃんが出迎えてくれた。「柚希ちゃんいらっしゃ~い」「おじゃましま~す」 沙月ちゃんと軽いハイタッチをしながら挨拶を交わす。「あ、友也さん遅いじゃないですか~」「掃除当番だったから皆には先に行ってて貰ったんだ」「そうだったんですね。じゃあ早く着替えてきてください、忙しいんですから」「ああ、わか……って今日は客で来てんだよ」「え? 手伝ってくれ







